
”ガーネット”という名前はグループの名称。
珪酸塩鉱物のネソ珪酸塩であり、更に※類質同像(同形)のグループ名です。
なのでかなりの数の種類があります。
ちょっと難しいですが、興味のある方は読んでみてください。
ガーネットグループ
- Hydrogarnetサブグループ
ヒブシュ柘榴石(Hibschite)
加藤石(Katoite) - Pyralspite(パイラルスパイト)サブグループ
鉄ばん柘榴石(Almandine/アルマンディン)
苦ばん柘榴石(Pyrope/パイロープ)
満ばん柘榴石(Spessartine/スペサルティン)
Knorringite(苦土クロム柘榴石)
Calderite(カルディア鉱)
Majorite(マジョライト) - Schorlomite-Kimzeyiteサブグループ
Schorlomite(シューロマイト)
Kimzeyite(キンジアイト)
森本柘榴石(Morimotoite) - Ugrandite(ウグランダイト)サブグループ
灰鉄柘榴石(Andradite/アンドラダイト)
灰ばん柘榴石(Grossular/グロッシュラー)
灰クロム柘榴石(Uvarovite/ウバロバイト)
灰バナジン柘榴石(Goldmanite/ゴールドマナイト)
1.の”Hydro”とは水酸化鉱物のこと。OHをもつもののガーネットグループのサブグループ。
3.の”Schorlomite-Kimzeyite”は、そのままの名前の石が命名されています。
4.の”Ugrandite”は難しい話になってしまうのですが、興味のある方だけ端成分と固溶体の話をお読みください。
端成分と固溶体
固溶体とは、2つ以上の元素が融け合って混じり合い均一になっているものをいいます。
端成分とは、★元素と☆元素が混じった固溶体があるとすると、★と☆が端成分となります。
固溶体で代表的なものはガラスです。
また鉱物では、翡翠やラピスラズリも固溶体の鉱物です。
そしてガーネットの場合、その端成分とは6つです。
- 鉄ばん柘榴石(Almandine/アルマンディン)
- 苦ばん柘榴石(Pyrope/パイロープ)
- 満ばん柘榴石(Spessartine/スペサルティン)
- 灰鉄柘榴石(Andradite/アンドラダイト)
- 灰ばん柘榴石(Grossular/グロッシュラー)
- 灰クロム柘榴石(Uvarovite/ウバロバイト)
この6つのガーネットを、1~3・4~6の2つのグループと考えてください。
主に3種類ずつの端成分が様々な形で固溶体を作り出します。
更に、固溶体は高温では不規則ですが、温度が下がると均一になり規則性を持ちます。
ガーネットは6種類の端成分で主に3つずつがそれぞれに混じり合うため、ものすごい種類の多さとなっています。
そして、先に話した”類質同像(同形)”ですが、似たような化学式・似たような大きさのイオンを持っているものは結晶構造も似たような感じになります。
このことを類質同像(同形)といいます。
ガーネットのネーミング
ガーネット一族の種類別のネーミングですが、
灰ばん柘榴石(Grossular/グロッシュラー)の、
- 透明褐色→ヘッソナイト
- 緑色→ツァボライト
灰鉄柘榴石(Andradite/アンドラダイト)の、
- 透明の緑色→デマントイド
- 黄色→トパゾライト(イエローガーネットともいわれます。)
- 透明の黒(含チタン)→メラナイト 等の別名もあります。
種類が多い+別名が多いので、コレクター泣かせです。
この他にもまだまだ別名があります。
ガーネットの意味 いわれ
名前の由来は、ラテン語で種子を意味する”granatus”。
和名の柘榴はそのものですね。
ガーネットは中世では”カルブンクルス”と呼ばれていました。
カルブンクルスとは、”燃える石炭”の意味。
ルビーと共に赤い色のガーネットは、その石の中に炎があってその炎が赤い輝きを放っていると考えられていました。
ノアの方舟で灯火の役目をしたのはこのガーネットだというユダヤ人の伝説があります。
ユダヤ人は宝石を世界中に広めたと言われるほど、宝石の行商の達人。
誕生石の制定に関しても影響があったと考えられます。
また、十字軍の遠征時のお守りとしても使われていたそうです。
ガーネットの用途
生活の中では、紙ヤスリのザラザラに使われている事も有名です。
ザラザラに使われる他の材料としては、珪石も使われるそうです。
日本では研磨剤用として、奈良県ニ上山で採掘されました。
ウバロバイト Uvarovite

和名 灰クロム柘榴石(かいくろむざくろいし)
ガーネットは大きく分けるとアルミニウムが主成分のものとカルシウムが主成分のものとに別れます。
アルミニウム主成分のガーネット
- 鉄ばん柘榴石(Almandine/アルマンディン)
- 苦ばん柘榴石(Pyrope/パイロープ)
- 満ばん柘榴石(Spessartine/スペサルティン)
カルシウム主成分のガーネット
- 灰鉄柘榴石(Andradite/アンドラダイト)
- 灰ばん柘榴石(Grossular/グロッシュラー)
- 灰クロム柘榴石(Uvarovite/ウバロバイト)
美しい緑色の宝石。
以上6つの中で、一番産出が稀なものがこのウバロバイトです。
十二面体の結晶の形で産出することがありますが、結晶の大きさは小粒なものがほとんどです。
緑色の発色はクロムを含むためです。
クロム
石が好きな方は、ルビーやエメラルドが思い浮かぶことと思います。
緑色と赤ですが共に少量の酸化クロムが含まれてこの色合いになっています。
一般的にクロムというと、ステンレス。
主成分は鉄で、ニッケルやクロムを含んだ合金です。
10.5%以上クロムを混ぜた鋼をステンレスと定義しています。
様々なものに応用されていますが、ステンレスは錆びないというイメージがあると思います。
なぜ錆びないのか?
鉄にクロムを混ぜるとクロムは酸素と結合し、鋼の表面に薄い膜(不動態皮膜)ができます。
この膜がサビの進行を防ぎたとえ傷をつけられても酸素さえあればすぐにもとに戻ります。
不動態皮膜は100万分の3mm程度とのことですが、こんな見えないような薄い膜が台所をはじめとする生活用品の救世主となっています。
クロム鉱石の目印的存在
クロムの主要鉱石としてはクロム鉄鉱があります。
このクロム鉄鉱は、黒っぽい色合いであまり目立った特徴がないためわかりにくいのですが、ウバロバイトは美しい緑色をしているため目印となります。
ウバロバイトの産出場所としては、蛇紋岩及びスカルン・変成作用を受けた石灰岩中等があります。
基礎データ(ウバロバイト)
化学組成 | 珪酸塩鉱物 Ca3Cr2(SiO4)3 |
色 | 緑色 |
条痕 | 白色 |
結晶系 | 等軸晶系 |
へき開 | なし |
硬度 | 7.5 |
比重 | 3.4~3.8 |
アルマンディン Almandine

Almandine Garnet
和名 鉄礬柘榴石(てつばんざくろいし)
このアルマンディンは斜方十二面体・偏菱二十四面体等で産出されることが多く、写真はカットしたのではなくそもそもの形です。
また粒々や塊でも産出されます。
産地としてはインド産がダントツで多く、ブラジル・マダガスカル・タンザニア・スリランカ等で産出されます。
日本では、茨城県真壁町山ノ尾から産出されます。
アルマンディンという名前の由来は、トルコのAlabandaに由来するそうです。
”双頭の鷲”
そしてアルマンディンで有名な話といえば…
ウィーン美術史美術館にありますが、なんと416カラットのアルマンディンを使用した、名門パプスブルグ家の紋章”双頭の鷲”。
ハプスブルク家といえば、よく知られているのがマリー・アントワネット。
ルイ16世の王妃、フランス革命の真っ只中を歩んだ人。
ハプスブルク家は政略結婚を繰り返し、自身の領土を広げていきました。
また、財産の流出にも気をつけていて近親婚が多かったと言われています。
基礎データ(アルマンディン)
化学組成 | 珪酸塩鉱物 Fe2+3Al2(SiO4)3 |
色 | 赤・褐色・緑色・黄色等 |
条痕 | 白色 |
結晶系 | 等軸晶系 |
へき開 | なし |
硬度 | 6.5~7.5 |
比重 | 3.5~4.3 |