女神イシスの物語

水晶のイシスとは…

イシス -Isis-
水晶の先端部分の三角の部分(頭)の平たい面を錐面(すいめん・ファセット/facet)と言いますが、錐面に五角形の形があるものをヒーリング分野にてイシスと呼んでいます。

ヒーリング分野についてのイシスではなく、女神イシスそのものについて神話を紹介します。

Ägyptischer Maler um 1360 v. Chr. 001
Ägyptischer Maler um 1360 v. Chr., Public domain, via Wikimedia Commons, original data
「女神イシス AD1360年頃の壁画」

帆船の冒険

ラーは帆船に乗って太陽を地へ運ぶ。太陽が登る時の船と沈む時の船があり、ラーは死者となって太陽が沈む時の船に乗り、毎夜冥界を旅する。旅のお供は、ヘカ・シア・フウ・マアト。舵取りはトト、呪文で船を動かすのはイシス。ラーを守る役目はセト。

登場人物は、前回の女神イシスの系譜で登場した面々ですね。
死者となったラーとその仲間たちは、冥界の12の門と12の州を通り抜ける冒険に出ます。
この冒険の最中、大きな蛇でラーの天敵であるアペプが現れ戦います。
イシスは呪文で、セトは槍で突いて攻撃!
ラーもヘリオポリスの猫※1となり、アペプの首を切り落としたりと力を合わせて戦い進みます。
するとミイラとなった歴代の王たちがラーを称え、再生の神ケプリが船に同乗し、残りの冒険をともに戦い、ラーはケプリとなって再生し、太陽が登る船が現れて太陽を地に運びます。
このケプリ神ですが、エジプトといえば、”フンコロガシの仲間のスカラベ”ですがこんな姿をしています。

Champollion - Panthéon égyptien, 1823 (page 243 crop)
Léon-Jean-Joseph Dubois, Public domain, via Wikimedia Commons, original data[[Champollion - Panthéon égyptien, 1823 (page 243 crop)]]

顔がスカラベの神です。
コロコロと転がして運ぶその姿が太陽の運行をイメージとのこと…
石好きにとってスカラベといえば、黄色いリビアングラス※2で作られたツタンカーメンの胸飾りが思い浮かぶと思います。
ケプリ神は再生の神。
エジプトでは死者の再生を願いスカラベはお守りとして死者とともに埋葬されます。
黄色のインパクトが強いと思いますが、普通スカラベは青もしくは黒で作るとのこと。
青は天を、黒は本来のスカラベの色を模してそう作られるそうです。

ーーー

参考

※1
”ヘリオポリスの猫”と文献にあったのでそのまま記載しましたが、”猫の女神バステトになって”と置き換えて読むのかなと思います。
蛇の首を刎ねる者(悪いものから守り家庭を守る)・アペプを倒すものという面があるとのこと。
勝手な私の推測ですのであまりあてにならないかもです。

※2 リビアングラスの色味はこんな黄色です。

LIBYAN GLASS Gilf Kebir Libya North Africa
LIBYAN GLASS Gilf Kebir Libya North Africa


したたかなイシス

エジプトでは物の名前はそのものが存在するために必要不可欠なものであるという認識があり、もしも誰かのお墓の名前を削ってしまったら、削られた人の死後の世界は破壊されてしまう…
つまり、本当の名を知れば、どうにでもできるということです。
女神イシスは様々な名前を覚えることで、ラーの力を手に入れようと画策していました…

名前をどんどん覚えていき、最後に残るはラーの秘密の名前のみ。ラーは沢山の名前を持っている。全てを知るものはいない。そんなある日、船で太陽を運ぶ日々を繰り返し老いたラーは涎を垂らした。その涎が地面にこぼれ、イシスはそれを回収。涎と塵を混ぜて蛇を作り地面にぽんと置いた。ラーはイシスの作った蛇に躓き、その蛇に噛まれ毒に打ち震えた。苦しむラーは神々を呼び助けを求めた。

イシスのスペックは”言霊”で、3つの力に登場した”フウ”の力です。(参考 女神イシスの系譜
さてイシス、どうするか?

私に治療をさせていただけないでしょうか。私ならば可能です。しかしそのためにはお名前を私にお教えくださいますようお願い申し上げます。そうでなければお助けできません。
こうしてイシスは名前を知り、ラーを助けた。

こうして知ったラーの秘密の名前。
ラーの力を手に入れたイシスは、自身の息子ホルスにその力を譲渡したとも言われています。

オシリスとイシス 夫婦の物語

オシリスとイシスは結婚し夫婦となり、セトとネフティスが結婚し夫婦となりました。
そして、一番上の兄であるオシリスが神々の王となりました。
そこでセトは…

気に入らない。
自分のほうが王にふさわしいのに…
オシリスめ!

オシリス暗殺計画start!
セトは宴会を開き、美しい櫃(ひつ・棺と表現されている場合が多い)を用意しました。

「ぴったりな者にこの櫃を贈る」
次々に人が入ってみるものの皆合わない。

セトはオシリスにぴったりに用意していました。

「ではこの櫃はオシリスへ贈ろう」

すると、手下たちがその櫃の蓋をしめ、釘で打ち付け、その櫃はそのままナイル川に投げ捨てました。
半狂乱になってイシスはオシリスを探します。
しかし見つからない…

オシリスの櫃は遠い遠いビブロスという街へ流れ着いていました。
そこにギョリュウの木が育ち、その大きな木の中に櫃を包み込み、更に大きくなりました。
ある日、ビブロスの王はこの立派な木を切らせ、宮殿の柱としました。
シリウスの櫃は中に入ったまま…

イシスはひたすら探していました。
そんなイシスの話をビブロスの女王がききつけ哀れに思い、自身の子の乳母としました。
自分が女神イシスだとは言わずに乳母として生活し、預かった子供を不死身にしようと毎夜魔法をかけていましたが、そのことがヒブロスの女王にばれ、その時初めて自分の素性を明かし、オシリスの櫃を柱から出しイシスは泣いて泣いて泣き叫びました。

その後、イシスはオシリスの棺とともにエジプトに戻り、パピルスの茂みに櫃を隠しました。
しかし、櫃はセトに見つかってしまいます。
セトはオシリスをバラバラに切り、エジプト中にばらまいてしまいました…

イシスと妹のネフティスで必死にオシリスの体を探しました。
オシリスの体のパーツが見つかると、イシスは同じ形に蝋でそのパーツを作り、見つかった地域の祭司に託し、オシリスを祀る聖堂を作っていきました。

オシリスとネフティスの間にできた不義の子アヌビスは、オシリスを包帯でつつみ、ミイラ※3を作りました。
このオシリスのミイラが世に作られた初のミイラとなります。
イシスは自身のスペックでオシリスを目覚めさせ、オシリスは冥界に下り冥界の王となります。
冥界に下るまでの間、オシリスとイシスは逢瀬を重ね子が宿りました。
その子の名前はホルスです。

ーーー

 ※3
ミイラにする際、脳と心臓以外の臓器はすべて取り出し防腐処理をした後乾燥剤煮付け脱水し、油や香料などを塗り込み、包帯でぐるぐる巻にして70日後に棺に入れて完成します。
アヌビスがオシリスをミイラにしたことから、歴代の王はミイラになる=オシリスと一体化するという解釈となり、冥界でオシリスのもとで暮らすという未来を信じていました。

ホルスVSセト

ホルスは王であったオシリスの子・セトはオシリスの弟。
オシリスは冥界へ下り冥界の王となり、この世の王の座が空きました。
セトとホルス、どちらがふさわしいか神々に意見を求めますが、揉めまくります。
ラーは太陽を運ぶ船を運行する上で、セトに守ってもらっています。
そう、忖度です…
それぞれの考えや事情が絡み、意見の合う合わないも出てきて、神々も揉めはじめる始末。
どんどん争いは激化を増しテレビドラマにありがちな(=子供の喧嘩を気合を入れて大人が展開)内容となっていきます。

その争いの中でイシスが絡んだものが1つ…

イシスは自身の息子ホルスのためうまく立ち回り、セトに不利な発言を引き出した。はめられたと思ったセトは怒り狂った。
「勝負だ!ホルス!お互いカバとなり、長く潜っていられたほうが勝ちだ!」
これを見ていたイシスは、自身の息子ホルスを勝たせようと、銅製のモリを水に放った。しかしそのモリはホルスに刺さってしまった。慌ててもう一度イシスはモリを放った。今度はセトに命中した。
「イシスよ、あなたは私の姉…弟にこんなことをするのか?」
セトにこう言われ、イシスはモリを引き上げた。それを見ていたホルスは怒り狂った。
「母は息子よりも弟を選ぶのか!」
ホルスは怒り狂って母であるイシスの首をはねた。

揉めまくっている神々に、こんなひどい事態になってしまっているのですよと見せつけるため、イシスは首のない女神の石像となったとあります。
しかし、石像にもなっているけれど死んでいないのです…
さすが神…
神話のバリエーションの楽しみ方の一つだと思います。
神話に触れたばかりの頃は、なんでこう話が入り組んでいていくつもあって同じ人の名前が違ったり一緒になってたりでわからないっ!と思っていたのですが、なぜそうなのかがわかった上で触れると、楽しくなりました。

そしてそして…
数々の戦いの末、揉めすぎてどうしようもなくなった王位継承マッチ。
困り果てた知恵の神トトは、冥界から元王であったオシリスを呼び寄せます。

「なぜ、正当な継承権を持つ私の息子ホルスが王位略奪にあわなければいけないのか?」

これによって争いは終了し、ホルスはエジプトの王に、セトはラーとともに太陽を運ぶ船に乗り天を巡りました。

 ーーーーー

3部作となりました神話のトリビア。
これにて一度シメとします。
書きたい日が来たらまたいつか…

プチシリーズ

  1. エジプト・ギリシア・ローマの神話について -概要-
  2. 女神イシスの系譜
  3. 女神イシスの物語

参考文献 資料

記事中のリンク先であるウィキペディア
世界の神話大図鑑. (2021). 日本: 三省堂.
エジプト神話集成. (2016). 日本: 筑摩書房.

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