
結晶が成長する段階で、その環境的要因が変化することによって成長が止まったり、他の鉱物に覆われてしまったり、折れてしまったり…様々なことが起こります。
様々なことが起こった結果は形にも現れます。
セプタークォーツ(松茸水晶)及びリバースセプタークォーツ(冠水晶)は、一度成長した水晶の頭の部分に覆いかぶさるように一回り大きな水晶及び冠のように一回り小さな水晶が再成長したものです。
セプターとは、笏(しゃく)のことであり、国の君主が権威や威厳の象徴として持つ杖のことでその形状からこの名前になったのでしょう。
Yelkrokoyade, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons, original data
オーストリア帝国の王冠、王笏、オーブ。ウィーン(オーストリア)の王室宝物庫に保管されています。
セプタークォーツはクラスターの場合、小さなポイントにはあまり見られず、大きなポイントのみ見られることが多くあります。
セプタークォーツはあまり数が多くはなく、リバースセプタークォーツはセプタークォーツと比べ少なめです。
ベースのポイントと頭の部分の透明感などが違うのは、ベースのポイントの成長時と再成長時の環境的要因が変化したということがわかります。
例えば、ペグマタイトの中で成長すると考えたとき、温度の高い気相時にベースのポイントが成長し、含まれている他の鉱物が表面を覆うことによって成長が一旦止まり、温度が下がり熱水状態となって再び成長したと仮定してみると、温度が高かったときに含まれている成分や量と下がったときに含まれている成分や量が違うため、ベースのポイントと再成長した松茸の傘や冠部分の質感の違いがでます。
また、パープルもしくはブラウン-ブラックに色味のあるものが見られますがこれは不純物が原因の発色です。
低温時に取り込まれる主な不純物のメインは鉄で、パープルの色は鉄が取り込まれ自然の放射線にさらされた結果で、ブラウンからブラックのものは、高温時にアルミニウムが不純物として取り込まれ自然の放射線にさらされた結果です。
石が好きな方は、必ずコレクションにあると思われるセプターとリバースセプター。
いろいろな出来事を乗り越えて、キュートな姿を今に見せてくれています。