石の基礎知識として、色 条痕について見ていきます。
色の発生
MarcellusWallace, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons, original data
[[A Prism scene rendered with Indigo Renderer.]]
鉱物の色は結晶と深くかかわっています。
光は赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7つのスペクトルから出来ています。
結晶はスペクトルの中の色を吸収し他の色を反射し、この反射した色が鉱物の色となります。
赤く見える鉱物の色は、赤以外の色を全て吸収して、赤い色を反射しているということです。
全てのスペクトルを吸収してしまうと黒く見えます。
自然界の中では、原子の配列にまず欠陥が出ます。
この欠陥こそに、鉱物の色の秘密があります。
この欠陥が原因となり、色が発生するからです。
そして、一言で欠陥と言っても、色々な欠陥があります。
例を2つ挙げます。
結晶中に、微量な不純物元素が含有されていることが原因
鉱物によって、同じ不純物元素でも結果は異なります。
クロムが鋼玉(コランダム)に入ると赤いルビーに、緑柱石(ベリル)に入ると緑色のエメラルドになります。
結晶構造中にあるはずの元素やイオン等が欠落してしまっていることが原因
この場合、欠落してしまっている部分を空孔といいます。
更に、この空孔が着色の原因になっている場合はカラーセンターと呼ばれます。
他に、オパールやムーンストーンのように光の回折が発色の原因であったりと多種多様な原因が考えられます。
もちろん、鉱物自身の結晶構造そのものが発色の原因となっている場合もあります。
”欠陥がきれいな色になる”
つるつるでクラックやインクルージョン(内包物)がなく、透明度が高いものがよいとされる石の一般的な価値観があります。
でもその、内包物やクラックが絶妙な味になるのです。
たとえば”琥珀”。
虫が入っているものがありますよね。
また、太古の水が水晶の中に閉じ込められているものも。
クラックはそのクラックがゆえに、光を反射し、美しいレインボーがでます。
欠陥こそが美しさと個性の源。
欠陥は欠陥ではなく、何者にもかえられない素敵な個性ですね。
自色と他色
自色 | 鉱物が自身の成分で作るもともとの色。 |
他色(タショク) | 不純物や欠陥によって発生する色。 |
自然界では他色がほとんどです。
多色性と変色性
多色性(タシキセイ)
角度によって色が違って見えること。
これは、結晶のどの方向に光が通過するかで偏光の仕方が違ってくるためです。
多色性は結晶が異方性か等方性かで決まります。
等方性と異方性
鉱物の結晶に関することだけではなく、物質や空間の物理的な性質が方向によって変わらない(等方性)・異なる(異方性)ということです。
建築や電場など、様々な分野・シーンで使われます。
では鉱物、結晶ということで考えてみます。
ある方向に決まって割れるへき開、これは異方性と考えられます。
結晶のへき開は、物質や空間の物理的な性質が方向によって異なるからです。
そしてこのへき開は、原子の結合が部分的に弱くなっているところに沿って割れますが、非晶質(ガラス・オパール等)は均一なためにこのへき開はありません。
よって、非晶質な物質のへき開は、物質や空間の物理的な性質が方向によって変わらないので等方性と考えられます。
単屈折と複屈折・光学的等方性と光学的異方性
結晶に光が入ると、光が曲がる・屈折する現象(光の方向が変わる)が起きますが、単屈折と複屈折の2つがあります。
単屈折
現象 | 光が入ると常に一定の屈折率を示すもの 入った光の速度も光の振動も変化なし |
該当するもの | オパール・ガラス等の非晶質 等軸晶系の鉱物(3本の結晶軸が全て等長)ダイヤモンド等 |
単屈折の鉱物は光学的にどの方向にも同じ特性となるため、光学的等方体とも呼ばれます。
複屈折
現象 |
光が入ると、2つの屈折率が存在しており、その一つ一つに合った2つの屈折光に分かれる現象。 入った光は速度を異にした2つの別方向へ進み、お互いに直交する振動方向を持った偏光となります。 |
該当するもの | 非晶質・ 結晶していないもの(オパール等)及び等軸晶系以外の鉱物 |
複屈折の鉱物は光学的に軸の方向によって特性が異なるため、光学的異方体とも呼ばれます。
参考 屈折率
多色の数と結晶系
多色性は、下記の二色性と三色性を総じて表す言葉で、最初にサクッと書きました”角度によって色が違って見えること”とは、鉱物の色が結晶学的な方向によって異なることということです。
方向の数 | 結晶系 |
0 |
等軸(立方)晶系(どの方向から見ても同じに見える) 光学的等方性により内部吸収での差がない。 |
二色性 |
六方晶系 正方晶系 結晶軸の方向で光の速度が異なって進むので内部吸収による差が生じる。 |
三色性 |
斜方晶系 単斜晶系 三斜晶系 結晶軸の方向で光の速度が異なって進むので内部吸収による差が生じる。 |
結晶軸の方向で光の速度が異なって進むので内部吸収による差が生じ、方向によって色の変化がみられます
ルビー等のカットしたルースを思い浮かべてください。
カットした方向(光が入ってくる方向)によって色合いが微妙に変わりますよね。
アイオライトは強い多色性を示す鉱物として有名です。
変色性
光源によって異なる色になること。
アレキサンドライトは自然光では緑色・白熱電球では赤に見えます。
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条痕
鉱物を粉にした時の色を条痕色と言います。

素焼きの白い陶板(条痕板)に石をこすり付け、粉が何色か判断します。
なければお茶碗の底(つるつるしていないところ)やタイルの裏でも大丈夫です。
鉱物を少し引っかいて粉にして、白い紙にこすり付けてもOKです。
鉱物の見た目の色と、条痕色は必ずしも一致していません。
例えば、黄鉄鉱は見た目は金色・条痕は黒っぽいです。
風化していない表面で調べる限り、鉱物の条痕色は標本によらず一定しています。
これを一貫性といいます。
この条痕板より硬い鉱物の場合、この板に鉱物をこすりつけても粉が出ません…
他の方法(もっと硬いもので引っ掻いたりぶつけたり…)で無理やり粉を出すというのもなんですよね…。
鉱物の外観の色とこの条痕色は違って見えることがあるので、鉱物を見分けるときの手がかりの一つとなりますが、通常、モース硬度7以上の鉱物はほとんどの鉱物の条痕は白色と言われています。
硬度7といえば、石英・水晶ですが、硬めの鉱物にはあまりガイドにはならないかもしれません。